私は、今回、このカヴァー曲集で、初めて本格的に小柳ゆきの歌唱に接したのだが、冒頭の「恋のフーガ」と二曲目の「異邦人」から、「あれ?小柳ゆきって、こんなに線の細い、高音の伸びない歌手だったの?」と、「あなたのキスを数えましょう - You were mine -」で彼女に抱いていた、圧倒的な声量を誇るパワフルな歌手というイメージとのギャップに、かなりの戸惑いを覚える聴き始めとなった。 三曲目の「愛が止まらない〜Turn It Into Love〜」からの三曲では、曲のテンポ感・リズム感が、彼女が持っているものと合っているのか、スケール感に物足りなさは感じるものの、なかなかの好唱を聴かせてくれる。 しかし、「MISS BRAND-NEW DAY」は、イメージ的には彼女に合いそうな曲であり、好唱を期待したのだが、もう一つ曲に乗り切れていない。 「会いたい」からの三曲では、ようやく、彼女の本領が発揮される。いずれの曲も、歌の音域が彼女にピッタリ合っており、スケール感豊かに、思う存分、気持ちよく、歌い上げている。彼女の長所・持ち味が最大限に発揮できる、彼女が歌うべき曲は、こうした曲なのではないだろうか。 アルバムとして、曲の構成にメリハリを付けようとする意図はわかるし、あるいは、彼女の歌いたい曲を集めたのかもしれないが、彼女の個性には合わない曲が散見されたのが惜しまれる。